「肩こりには、ここを押せば効く」という情報はたくさんあります。でも、なぜそこを押すと楽になるのかを説明しているものはほとんどありません。仕組みを知ると、セルフケアの精度が上がります。

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肩こりを起こしているのは、どの筋肉か

肩こりの多くは、上部僧帽筋(じょうぶそうぼうきん)という筋肉が原因です。首の付け根から肩先にかけて広がる筋肉で、肩をすくめたときに動く部分です。

触ると筋肉の固く感じるところ——そこがこの筋肉です。「コリ」の感覚がある場所と、ほぼ重なっています。

上部僧帽筋の解剖図:背面から見た筋肉の位置
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筋肉の中で何が起きているか

長時間のデスクワークや緊張が続く状態では、上部僧帽筋が低いレベルで収縮し続けます。強く使っているわけではないのに、力が抜けない状態です。

筋肉内で起きていること
STEP 1
筋肉が低レベルで収縮し続ける
デスクワーク・スマホ・緊張状態が引き金
STEP 2
筋肉内の血流が低下(局所虚血)
収縮が続くと血管が圧迫される
STEP 3
エネルギー(ATP)が補給できなくなる
血が届かないとエネルギーが作れない
STEP 4
筋肉が弛緩できない状態になる
ATPが不足すると筋収縮を解除できない
STEP 5
トリガーポイント(硬結)が形成される
筋線維の一部が過収縮したまま固まった状態
肩こりメカニズム図:持続収縮→血流低下→ATP枯渇→トリガーポイント形成のサイクル
図:持続収縮→血流低下→エネルギー枯渇→弛緩不全のサイクル。これが「肩こりが抜けない」状態の正体です。
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トリガーポイントとは何か

トリガーポイントとは、筋肉の中に生じた過収縮した筋線維の塊(硬結)のことです。押すと強い痛みがあり、離れた場所(肩から頭、腕など)に痛みが広がる(関連痛)のが特徴です。

上部僧帽筋のトリガーポイントが引き起こす主な症状
肩の重だるさ・首の付け根の痛み・側頭部〜こめかみへの頭痛・腕のだるさ

トリガーポイントは「揉んでも翌日には戻る」経験がある人に特に多く見られます。一時的にほぐれても、血流が回復しなければ硬結は再形成されます。

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鍼はどう作用するか

鍼がトリガーポイントに届くと、血流が回復し筋肉が柔らかくなります。これにより、硬結が解消されます。

鍼がトリガーポイントに到達するイメージ:深部の硬結まで直接届く
鍼はトリガーポイントの深さまで直接届き、血流回復を促します。

「ツボ押しより鍼の方が効く」と言われる理由のひとつは深さです。上部僧帽筋のトリガーポイントは、皮膚から1〜2cm以上の深さにあることが多く、指では圧が届きません。

指圧と鍼の到達深度の比較:指は表層止まり、鍼は深部のトリガーポイントまで届く
左=指圧は表層止まり。右=鍼は深部のトリガーポイントまで直接届く。
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セルフケアでできること

硬結を完全に解消するのは難しくても、悪化を防ぐことはできます。

肩こりセルフケア:肩をすくめて5秒キープ→ゆっくり落とす
①肩を耳に近づけるようにすくめて5秒キープ → ②ゆっくりと力を抜いて落とす。3〜5回繰り返す。
✦ セルフケア 3つのポイント
  • 肩をすくめて5秒→ゆっくり落とすを3〜5回繰り返す
  • 蒸しタオルを首の付け根〜肩に5分当てる(血流の一時的な回復)
  • モニターを目線より高くしない(前傾頭位を防ぐ)
参考文献
Simons DG, Travell JG, Simons LS. (1999). Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual. Vol.1. Lippincott Williams & Wilkins.

硬結が慢性化している、揉んでも翌日には戻るという方は
筋肉の状態を直接確認してからアプローチする方が近道です。

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